心理学の本を多く読んでいると、問題のある大人や子供ばかりを扱い、その人たちの原因を探って、カウンセラー、心理士、精神科医、が考えをめぐらせ、何とか光を見出すように誘導していく様子が描かれている。
 そういうのばかりを目にすると、こうしなければ、子供はこう育たないのではないか、こうしたら子供はこうなってしまうのでは、という気持ちになることがある。
 でもそうばかりではないだろう。
 同じ環境や境遇に立たされても、違う人生を歩む人も少なからずいる。自分の子供にこう対応しなければ、こうなってしまう!!という強迫観念があれば、自分を追い詰めることになる。意外といい加減で良いはずだ。何か子供に問題が起きたように感じてから、やり直しが効くことも多いわけだし、万全の体制で臨もうと頑張りすぎることはない。それこそ、子供の力をある程度信じていくべきである。親の対応により、社会の生き方を学んでいくとも書いてあるし。色々本を読んで、しみじみ実感しても、私のように、結局実践できるわけではないし。以前も書いたように、まあまあの親が一番だと書いてあったしね。
 なので、書かれてある通りに振舞わなければいけない、という必要はない。
 ただ、子供の心に起こっていることを、時には立ち止まって考えてほしいのだ。
 例えば、子供に怒ってしまったとしよう。その内容が、子供が原因によるものでも。そんな時、感情的になりすぎた自分を振り返り、その点だけに関しては謝り、子供の気持ちにじっくり耳を傾けてみよう。本当はどう思っていたのか。そしてそれを受け止めてあげよう。
 例えば、子供にかける言葉が見つからなかったとしよう。ならば、どう言ってほしいのか、子供自身が言えるまでじっくり聞いてみよう。言ってほしいことがわかり、それが言っても良い言葉であれば、少し恥ずかしくても、気持ちをこめて言ってみよう。
 例えば、子供の行動で不審な点があったり、いつもはしないような行動に出たりした時。その心の中を探るべく一緒に何かをしてみよう。
 そういったコツを知っていることは大切なのだ。子供の怒りは恐れとなる。恐れは抑圧され、閉じ込められ続けると恨みとなる。思春期になってそれが表れることがあるし、その頃にもまだ頑張り続けることもある。そして、後に大人になってから、あれは仕方がなかったと頭で理解できたところで、同じような場面に遭うと、突然その頃の感情がよみがえり、そういった時に追い詰められ、思わぬ言動に出ることがある。それが他人や子供に向いては大変だ。できるだけ、そうならないために、本を多く読み重ねている。自分にたたきこむために。感情のメカニズムは、万国、万人に共通するのだ。
 それでもやっぱり大変な思いをしたまま、うまくいかない子育てを苦しんで続けるのかもしれない。でも、何もしないよりマシなのだ。
 人の、あまりに目に余る対応を見ていて「あれで良いのか?!」と思った時、「私の対応はクドイかな」と思った時、本のことを思い出して、少なくともこれが良いか良くないかの確信を持つことができる。