『心の痛みのセルフコントロール』(ジョン・プレストン著 大野裕監修 岩坂彰訳 創元社)は、セルフコントロールと言うより、子供の気持ちを考える上で、とても参考になった部分が多かった。その中で、心理学の本を読んでいると、よく出会う考え方を上手に表現している文があった。是非紹介しておきたい。
 「非現実で不適当な信念のもとで、歯をくいしばって頑張り、心の中のものを感じないようにしようと決心してしまうケースも数多く見られる。‘タフにならなければいけない。泣いてはいけない。人生なんとかやっていかなければいけない’等と教えこまれて育つ人は珍しくない。これらが心の中の声になっている人は、普通の人間としての感情経験や感情表現からそらされていく。その声は、感情的になることは弱さと未熟さのしるしで、恥ずかしいことであると言う。このような信念を大切にすれば、おかしなことや周りを困らせること、恥ずかしいことや嫌われることはしなくてすむ。その意味ではこの声は愛のある声である。けれども、心が痛む出来事にぶつかったとき、この声に従って長期間にわたって感情を完全にブロックしてしまうと、決して良い結果は得られない。癒されるためには、感じる必要があるのだ。」
 心理学の多くの本に「‘大袈裟に考えないように、感じないようにしよう’と感情を押し殺すことによって、解決されることはない」ということが書いてある。否定的な感情をもしっかり自覚し意識することで、その心は真に癒される。それは、辛く苦しい作業だ。しかしそれを避けていると、別の歪んだ形で出てしまう。結果、癒されるために、より長い期間を要することになってしまう。
 子供も同じだ。肯定的な感情も否定的な感情もしっかり感じ、自分で消化できるよう、日頃の積み重ねが必要だ。以前の文でも書いたように、痛いことがあれば「痛いね」と共感し、さらにその痛みは消えていくことを学習していかなければならない。
 怒りの感情もそう。親が怒った時、「怒っている」ということを子供に知らせ、その後で落ち着いていることを示してやると良い。子供自身も自分の感情がそういうメカニズムでできていることを、実感するだろう。
 泣くことも同じ。泣くことで感情を外に発散し、それによって自分の気持ちをコントロールしていく。泣くことが、その子供の性格を左右することはない。心が強くても、人は泣く。むしろ、泣いて上手に感情を発散できる子は心が強くなる。泣くのを押さえつけられた子供は、別の行動や、暴力的な言葉、屈折した感情となって表れてくる。すぐにではなくても随分後からかもしれない。そしてそんな風に感情を押し殺していると、他の人が泣くことを許すことができない。大人も同じだろう。 もしも、自分の子供は人の話を聞ける子になってほしいと願うのであれば、親である自分が、じっくりと子供の否定的な感情にもつきあえることが一番の条件だそうだ。
 子育てって大変ですね〜本当に。ハー。