よく、人は「歌がうまい」とか「下手」とか言うが、その上手下手の基準て、その人その人で、どこにあるのだろう。
 例えがちょっと大袈裟だけど、絵で言えば、ピカソの絵を見て、ピカソをまったく知らない人はどう言うだろうか?彼のゲルニカを見て、デッサンも無茶苦茶上手な、繊細な絵を描くこともできる人だと、想像できるだろうか?
 そう思うと、「上手」と言われる人たちの腕前は、基本ができているという当たり前のことなのかもしれない。
 歌がうまいと思われるには、まず耳が良くなければいけないですよね。音程が正しいのは前提だ。次に発声法。声を震わせるような技術ではなく、お腹から声を出してほしいよネ。大きく張っているだけで上手だと思っている人も多いが、単調で聞き苦しい。2曲も聴けばお腹一杯。つまり、表現力がなければ飽きてしまう。抑えた声なのに、訴える力の強さがあったり、弱さを出したり、そして音程は決してぶれない。そんなものを出せるその人の表現力を目の当たりにすると、音楽のセンスがあるんだなあとしみじみする。洋楽だけど、ベット・ミドラーは絶品だと思う。あとは当たり前だけど、リズム感も必要だ。
 うたっているうちににじみ出てくるような、その人の持つ味も出ていてほしい。わざとぶっきらぼうに歌う‘味’もある。例えば、元ハイロウズ、現ザ・クロマニヨンズ甲本ヒロト真心ブラザーズ倉持陽一
 楽器の音が大きすぎて自分の声がよく聞こえなくても、ブレずに自分の音をしっかり歌えるのもスゴイなあ。「(自分の声が)よく聞こえな〜い」なんて耳を押さえながら歌っている歌手を見たことがある。ご愛嬌とは言え、聞いている側としては情けないよー。トホホー。
 そして、何と言っても上手下手が表れるのは、自分の持ち歌ではない、人の歌を歌った時。音程やリズムを正しく歌えるのは当然の条件。そしてそれプラスが肝心。ちゃんと自分のものにして、自分の持ち味を出して、堂々と歌いきれる。この人の歌みたい!と思わせるくらいに。
 そんなに上手な人が、昨今のロックミュージシャンでいる?
 今のところ、私の個人的な、そんな見方で歌が上手だと思っているのは、サザンオールスターズの桑田圭祐と、奥田民生だ。
 そして、私は奥田民生の作る曲も、その世界も、歌う姿も大好きだ。