赤ちゃん返りをする4歳の息子に、つきあってやっているうち、2ヶ月近くが過ぎた。
 息子は体調が悪いと、夜なかなか眠れなくなる。それでついつい怒ってしまう。「寝付かせる時、子供が寝ないからといって一番してはいけないことは、お母さんがイライラすることです。」そうか、私はダメな母親だな。気をつけなくちゃ。
 ―と猛烈に反省しても、次の晩寝ようとしないと、また怒ってしまう。そんな私を見て、息子も「僕も怒った!」と怒る。悪循環だ。「えーい、じゃあ風邪でも何でもひいてしまえ!」などと大喧嘩しながら時間が過ぎていく。そして最後に、ごめんね、怒りすぎたねと謝り、さらに、息子が寝た後に、自分は悪い母親だなあと一人ひっそりと泣くことも。この時間と労力の何たる無駄なことか。ハー疲れる。
 息子が寝ると、夫と、息子がいると話せないことを色々話したり、録画しておいたお笑い番組を観たり、ロマンチックとは程遠くても、私にとっては、そりゃもう魅力的な時間が待っている。そして、寝る時間にベッドルームに戻る。息子の寝顔を見る。……きっとこの瞬間の気持ちって、大抵の親が「毎日」経験しているんだろうねぇ。「可愛いなあ〜。」……そして、夫と「可愛いねえ。」と二人の間でしか成り立たない空気と会話を堪能する。
 息子は、何故か寝付く時、ベッドではなく、下に敷いてある布団で寝たがることが多い。そして夜中に、私の所に上がってくるのだ。赤ん坊の頃、そうしていたが、夜泣きがひどいので、添い寝に変えた。でも、最近は下で寝つきたがる。そして、夜中はやっぱり私の布団にもぐりこんでくるのだ。
 ところが先日の夜中。
 「かゆい」と言って起き上がり、肌をポリポリかく息子に気がつき、「上がるかい?」と聞くと、首を横に振り、また横になった。初めて断った。驚いていると、しばらくして手を伸ばしてきた。やっぱり抱っこかなと、こちらも手を伸ばすと「母ちゃん、手をつなぎたい。」と言った。えっ久しぶりに‘母ちゃん’って呼ばれた。しかも抱っこじゃないの?と手をつなぐと、しばらくして自分からほどき、手を布団の中に入れ、また寝た。
 え〜〜〜〜〜〜っ。
 当たり前だけど、本当の自立はもっともっと先だ。まだ自分一人でできないことも多いし、精神的にもしなだれかかっている。しかし反抗期なんか来ると、喋ってくれなくなり、顔も見せてくれなくなるだろう。しっかり甘えさせた分、早いうちから母親離れもしっかりとやってくるだろう。お友達の方が段々良くなってくるだろう。
 色々頭ではわかっているのだが、これは私には相当に驚いた出来事だった。そして「とうとうやってきたか。」と寂しさを感じずにはいられなかった。
 ちゃんと自分の力でお兄ちゃんになってもらうために、しっかり甘えさせている。その成果が少しずつ出てきているのだ。喜ばしいことなんだ。これからどんどん親離れを目の当たりにするんだなあ。私って大袈裟だなあ。でも切ないなあ!
 依存と自立。依存の間はうっとうしいと思っているはずなのに、自立に向かう子供を見て親はほんの少し戸惑ってしまう。親の気持ちだって複雑なんですよねえ〜。