そんなこんなの経験があって、トイレトレーニングも「のんびり子育て」のやり方で良いのだと心から納得し、それを実行していた。本格的に始めたのも遅かったし、私がイライラし始めたら、お互いの精神衛生上悪いからとすぐオムツに戻していたものだった。そしてそんなことを繰り返すうちに、いつの間にか取れていた。
 焦ったり急かしたりしなくても、本人の気持ちさえ固まれば、前へ進んでいけるのだということを実感することができた。
 周りの意見がなんぼのもんじゃい、という息子の心意気まで伝わってきて、私には頼もしく思えたものだ。
 もし子供が何かできなくて、外で悲しい思いをしたり恥をかいたりしたとしよう。でもそれは子供の問題だ。
 親は適度に促して、子供にやる気がなかったら強要する必要はない。周りを見ながら、融通利かせて素早く対応していくのも、生きていく上で育んでいかなければならない大切な能力なのではないか。順応性とか、瞬発力とか、臨機応変さとか。
 私など、帰国子女だったので、余計そんな気持ちが強いのかもしれない。帰国したら知らない習慣だらけだった。だからいつも周りを見て「日本ではこういう風にするのだ。こういう考えなのだ。」と、「ものすごく意識的に」学習していった。自分が変わっていると言われることは、とてもいやだったが、それを親のせいだと思ったことはもちろんない。
 それにしても、早いことがそんなに誇らしいのだろうか?何か突出して好きなことさえ見つければ、他の生活習慣に関しては、いずれ横並びだ。いずれ皆が大人になるのだ。大人の期間の何と長いことか。(年々早くなってくるのも実感しつつあるけどねぇ。)
そんなに早く大人になってもらわなくても、すぐ大人になっちゃうんだから。本物の子供らしさが発揮されるのは、子供の間だけ。貴重な瞬間だと思いませんか?また、子供自身にとっても貴重な経験だと思いませんか?子供らしいことが許されるこの期間。身につけようと意識して身につくものではない。
 最後に、どの心理学の本にも常識として書かれている言葉を書いておきます。
 「依存なくして、本物の自立は有り得ない」ということです。
 決して甘やかすのではなく、してはいけないことのルールを毅然と守りながらも、たっぷり甘えてもらいましょう。
 そして、慌てずゆっくり成長を見守りましょう。
 親が先回りして準備し、皆の前で上手にできたからって、その子供は本当に嬉しいでしょうかね?皆の前で得意になれたところで、本物の達成感を知り得るでしょうかね?誰の力で大きくなっていくんでしょうね。自分で周りを見ながら、自分の頭で考え、臨機応変に判断していく。他の人より知らないことがあるなら、自分で学んでいく。泣きながらでも良い。子供には、その心の強さ、たくましさを身につけていってほしい。