のんびり子育てが良いと実感したきっかけは、あらゆる場面にあった。
 例えば、息子の足の力は、胎児時代からすごかった。お腹を通して、私の膝の上に乗っている鞄を蹴り落とす。読んでいる雑誌を蹴りまくって、雑誌が揺れる。生まれてくると、まだ座り始めの時期から足をビーンと伸ばし、背もたれがあると勝手に立っていた。でも、歩き始めたのは普通だった。1歳の誕生日に数歩。それからがまたゆっくり。毎日数歩は歩く。歩けるようになったよ、と公言できるようになるまでさらに数ヶ月。そうなったら突然走り始めた。こんなに早く走り始めたらラクかも……という親の期待をまた裏切って、息子は抱っこ大好き。とにかく歩かない。そこだけ私の遺伝子を受け継いでしまった。さらにベビーカーも嫌い。ベビーカー用意していても抱っこ。数十分と乗っていなかった。
 なんごも0ヶ月から話したと書いていたけど、話し始めたのは標準より遅かった。「とうちゃ、かあちゃ」と1歳前には言い始めたので、可愛いな〜と目じりを下げていたら、「とーた、かーた」「とー、かー」と、どんどん退化していった。ちゃーんと向き合って返事してたのにぃ。
 単語に関しても少しずつ増えていくが、なかなか喋らなかった。
 そして2歳7ヶ月。
 突然喋り始めた。うるさいくらいに。そりゃあもうずっと喋っていた。「そうね〜」と返事しても納得してくれず、ちゃんと息子の言葉を真似するまで繰り返し言わされた。朝起きてから晩寝るまで一日中喋っていた。食事の支度をしている時でも横から喋っていた。
 今はどもっている。こっちは気長に待っているのに、たくさん話したいことがあるらしい。大人と一緒に話したい、自分の一挙一動、試行錯誤をいちいち言葉にしたい、と焦るようだ。まあゆっくり見守っていきましょう。
 あーもう一つ思い出した。息子は、ゴムの乳首をなかなか手離せないでいた。ガーゼや柔らかい布をくわえるのも大好きだった。ストローを吸えなかったので外出の時は、いつもお茶のボトルにゴムの乳首をつけて持ち歩いていた。でも私はあまり心配していなかった。世の中には、大人になってもタオルなど、子供の頃からのお気に入りの物が手放せない人が結構多い。そんな人を身近に知っている私は、何の心配もしていなかった。また、夫も幼い頃ストローが苦手だった、という話を聞いて、我が息子も先は長いのだろうと思っていたのだ。そうしたら、2歳10ヶ月の時に突然やめた。言い出すまでこちらも言わないでいたら、何となくそのままやめてしまった。
 いや、充分長いのだろうが、いつかやめさせなくちゃなーと思うくらいで、さほど気にしていなかった。周りで指しゃぶりやおしゃぶりを気にするお母さん方がいるので、アラそれなら私はもっと気にすべきだったのか?と振り返ることがある。しかし、指しゃぶりなど、気を紛らわす良い方法があるのを自分で知っている、という意味で、誉められたものらしいですよ。
 どうか焦らないでほしい。子供の気持ちが安定し落ち着いてくるのを、ゆっくり待ってあげましょうよ。こちらがある程度促したら、あとは「自分で」やめられる時まで、できるようになる時までね。