そう言えば、15年位前の話。
 母がオーケストラで演奏会に出た時、私が楽屋に遊びに行った。そこで、母の仲間が「お嬢さんは何か楽器するの?」と聞いてきた。
 「前は、一生懸命ピアノやってましたけど、もうほとんどしません。」
 と言うと
 「まあ、それはお母さんの怠慢ね。」
 とおっしゃる。母に直接向かって。
 「はあ…」
 私は横で、「随分不可解なことを言う」と、おかしな顔をしていただろう。
 母の方はと言えば、後で憤慨してましたよ。
 人の育児に口出ししないでほしいわ!って(笑)そりゃそうですよねぇ。

 クラシックやってる人の中には子供にもやらせる人が多い。そんな私も3歳から習っていたけど、きっかけ作りと先生役をしてもらっただけで、その後の‘続けるか否か’の選択は折に触れ、私自身にまかされていた。
 本当にプロになりたければ、一日の大半を楽器と過ごさなければいけない。
 心身ともに、相当なエネルギーと練習時間を要するから、プロや定期的にオーケストラに参加しなければならない人は昔、子供ができて面倒を見てくれる人がいなければ、子供を柱にくくりつけてでも練習しなければいけなかったとか。
 そりゃそうではない人もいただろうし、最近は事情が違うだろうし、単にそれだけ厳しいってことが言いたいんだろうけどさあ。……でもそれだけ取り上げるとしたら、今なら虐待だよねぇ。
 残念ながら、私には理解できない。単純に、その行為だけじゃなく、色々犠牲にしてまでそれに邁進できないのだ。その時点で、私が音楽の道に進むことはまず無理ってことなんだねぇ。
 まあ何が大切と思うかは人それぞれで、違うのは仕方がない。……そう。仕方がないんだから。だから何度も書くけど、母は、子供は子供の生き方があると、ある程度まで環境を整えるだけで、意志、決断は私にまかせてました。そういう子育てをしてくれました。
 ……よって「怠慢ではなーい!!」