冬が来ると、必ず我が家の近くにツグミが来るようになった。
 この冬は、いつもカラスがとまる駐車場の角の電柱上に、ツグミが二羽とまっているのを見つけた。あまり聞き慣れないちょっと澄んだ鳴き声がして、見上げると、やはり見慣れない形と大きさの鳥。あの輪郭はツグミっぽいけど、あんなにお腹白いかなあと思い、慌てて家の二階に上がって双眼鏡からのぞいた。双眼鏡から見ると、ちゃんとお腹の斑点が見られ、顔もよく見えた。目の辺りにある黒い筋。ああツグミだ! しかも電柱をはさんだ電線に一羽ずつ二羽。可愛い。
 その後、聞き慣れた鳴き声でどこかへ飛んでいった。
 そして、近くの大きな通りでシジュウカラも見た。
 冬になったなあと思う。
 今回は、そんな野鳥を夫が愛でることについて少し書く。
 夫は、動物が嫌いではない。息子は好きとか嫌いとかでなく、無関心なのだが、夫はどちらかと言えば好きなようだ。犬やカエルのぬいぐるみも好きだ。
 近所にとても人懐こい犬がいて、通り過ぎる度に声をかけているが、他に人懐こくない犬でも吠えてきたら、夫は声をかける。おかげで夫に声をかけられようとして、ぬっと犬小屋から顔を出す犬もいるくらいだ。通勤途中の家からでも、吠えられたら声をかけるうち、夫に向かって「おーい、気づいているよ!」と言わんばかりに吠えるようになったらしい。そして声をかけたらおとなしくなるようだ。そんなわけで、夫に「行ってらっしゃ〜い」と送り出してから、しばらく夫を見ていると、あっちの犬に声をかけ、こっちの犬に声をかけ、とさながら不審者、いや、犬にとっては構ってもらえて嬉しいようで、見ていてほほえましい。そうやって公の場で唐突に声を出すことに対して夫はまったく抵抗がないようだ。犬に声をかける夫、を見るのが面白い。
 でも犬を飼うのは責任が伴うし、飼ったところで面倒を見るのはツマになるだろう、というスタンスなので飼わない。田舎なので、旅行する時に預けられる所もあまりないようだし。
 「愛でるだけで良い。僕は犬を愛でる!」
 という宣言までしている。
 そしてその姿勢は、野鳥にも通じる。
 スズメやカラスみたいな、メジャー過ぎて愛着がわかない、と私が思っているような鳥まで「可愛い」と言う。スズメへの愛着は結構強くて、スズメだけのカレンダーを買っても良いとか言っているくらいだ。
 カラスに関しても。いったい何がそんなに夫の心を掴むのかわからないけど、夫はカラスも愛でる。犬も愛でているが、野鳥も愛でる。「野鳥なんて、可愛がるには最もお手軽だよ! 無責任だし、しょっちゅう見ることができるし」それが利点だと主張する。そういえば、スズメのぬいぐるみまで持っている。でもリアル過ぎて、そのぬいぐるみが倒れていると怖いとか言う。夫の犬と野鳥への愛情が止まらない。