ぬいぐるみに関して、書いていきたい。
 まずぬいぐるみと私の思い出と言えば、気が付いたらぬいぐるみに囲まれて育っていて、ものすごい量になっていたこと。物心ついた時のお気に入りは、子ひつじのぬいぐるみ。胴体はかたい感じだった。オルゴールが鳴ると、首をゆっくり回してくれる。モンチッチのぬいぐるみも好きだった。親指をくわえるようにつくられていて、お腹を押すと音が鳴った。腕を持って歩いていたら、横断歩道の向こう側から歩いていた若者たちに大笑いされ、どうしたのかと思ってその視線の先を見ると、モンチッチの首が取れていた。恐ろしい光景! だけど、それ以上に恥ずかしかったのを覚えている。乱暴に腕を持ったまま振って歩いていたからこんなことになった。若者たちは、きっとその可愛いぬいぐるみのブラックな感じが可笑しかったんだと思うけど。あとは、黄色い小さい犬のぬいぐるみ。これは中身がみっちりしていてお座りの形のまま手足もバラバラでなく、動かせない。ただの黄色い塊のようなぬいぐるみ。何故これが好きだったのか、ものすごく謎なのだが、その黄色にたくさんの可愛い花柄が描かれた生地を使っていて、しかも何故か片面しか目や口などが描かれておらず、私は反対側の目や口を勝手にマジックで描き足した。これが何故か本当にわからないのだが、ものすごくお気に入りであった。
 そしてその他にもたくさんのぬいぐるみを持っていた私は、ニュージャージーから帰国する時に、段ボールいっぱいのぬいぐるみを手放したことも覚えている。ポンポン段ボールに景気よく「これもいらない」「これも」と言いながらぬいぐるみや人形を放り込んでいく私を見て、母は呆れていたことだろう。本当にお気に入りの物以外は、私は愛着がわかないのだ。全然平気。
 帰国後に覚えているのは、マンションに一人で寝るようになってから。
 白地のでっかいけむくじゃらの犬のぬいぐるみが好きだった。それより小さいけどポメラニアンみたいな顔で、白とオレンジみたいな色が入った犬のぬいぐるみとか。どちらもなぜか「まこちゃん」という名前を付けた覚えがある。犬は私にとって、当時、何故か「まこちゃん」だったのだ。今となっては、まったくの謎である。「まこちゃん」?……なんだそれ。なんでなんだ??
 名前のことは置いといて、当時はベッドの枕もとに、お気に入りのぬいぐるみをはべらさないと、心細くて眠れなかった。あとはずっとうさぎが好きで、うさぎのぬいぐるみを、買い物先で祖母にねだったことがある。ぬいぐるみとはちょっと違うのかもしれないが、もっと幼い頃に、祖母が作ってくれたうさぎのクッションのような枕のような物がめちゃくちゃ好きだった。色合いもキレイだったし、形がうさぎなのだ。しかも私の当時大好きだったにんじんを持っている。そのクッションのような枕のような物を、ぬいぐるみのように扱っていたことも覚えている。そして、もっと大きくなってから、祖母に新しいうさぎのぬいぐるみを買ってもらったのだ。人形のように座り、グレーで、ワインレッドのリボンを首につけ、白っぽいベストを着ていた。これは相当長い間可愛がった覚えがある。