息子の友達があんまりお行儀良いんで、感心することしきりである。
 そのうち二人の世界を楽しんでもらおうと、私はさっさと二階に上がって自分の寝室で家事の雑用作業をしていた。するとしばらくして二人が上がってきて、息子が自分の部屋を案内している。
 「来ると思って部屋を片付けたんだけど、机の上を片付けるのを忘れた。」とか言っている。いやいや、片付ける気なかったでしょう。机の上は隙間がないくらいに物があふれている。あまり積み重ねておくと、ゴキブリが出たという経験を持つ私は、積み重ねるのが嫌いで、それだけはしないでくれと息子に言っている。でもかなりの散乱状況である。
 「夏休みまで、あと〇日!」と汚く書かれてある画用紙を、息子が解説している。〇日の「〇」には、自分で数字をあてはめることができるようになっている。
 「これね、5年生だったか、っていう頃に作ったやつで、もう使っていないんだよ。」と言うと「外せよ」とか笑われている。そして「カレンダー10月のままだよ(その時、12月でした)。」と指摘をされている。さらに「時計は何で6時なの?(まだ3時台だったと思います)」と聞かれ「この時計止まってるんじゃないか?って思って、とりあえずわかりやすい6時に合わせてみたんだ。……二か月前に。」
 ここで危うく私は吹き出しそうになった。「二か月前なら、さすがにもう電池を入れ替え、時間を合わせて良いのでは」というツッコミはさすがにその友達も言わず、二人で笑っていた。もうそのきちんとしたお友達からしたら、何もかもひどいだろう。息子のいい加減さと私の雑な母親ぶりに、自分で笑ってしまいそうになった。
 その後、二人は下に降り、wii Uで、マリオメーカーをし始めた。最初の頃は息子の作った作品を披露したりしていたが、そのうち、その友達が没頭し始めた。私がちょうど前を通りかかった時は、「わっ。この子もこんな顔して遊ぶんだ」と驚いたくらい、ゲームに入り込んだ表情をしていた。
 そして時間になったので、車で送るよと声をかけると、そのお友達、「こんな遅い時間まで長々と……。」とか私に向かって、お辞儀しながら挨拶している。
 どこまでもお行儀が良い。もうおじさんみたいだ。
 でも、送っていく車の中で「楽しかったあ〜」と放心したように言っていたので、こんないい加減な対応と、行儀の悪い息子を見ても、ずいぶん楽しんでもらえたらしいと知ってホッとしたし嬉しかった。
 「育てやすそうな子だわあ」と、後から息子に話すと「でもちゃんと自分の主張もあるよ」と言うので、ますます羨ましい子だなあと思う。やりやすそうったらない。息子もあんなだったら、私もきちんとしつけられたものである。だけど、息子も自己のパワーやエネルギーにあふれているのだ。「でもお母さんは、〇〇君(息子の名前)が、お母さんの子で良かったって思ってるよ。」と付け加えておいた。
 ちなみにその返事は「当たり前だよ。だって自分の子だも〜ん」である。その自信はどこから来ているのか。そんな息子もまた羨ましく思った。