小学六年生の頃のことを少し思い出している。
 息子が中学三年生になろうとする最近、もっぱら中学高校の頃のことを思い出しているが、ふと思い出したことがあった。
 何度も書いたことがあるが、中学からの学校生活は楽しく、良い思い出が多い。だけど、小学生は帰国子女だったこともあり、その後に転校もして、先生も嫌いな人がいたり、かなり窮屈で辛かった。でも小学二年生の時の先生は、とても包容力があってクラス全体が和やかな雰囲気となったため大好きな先生だったし、小学六年生の時の先生も、クラスの雰囲気を良くすることに心を砕いていたし、にこやかで明るい雰囲気だった。何より誰かをひいきにしたりしない先生で、学級委員長になった私に対してもごくごく普通に接し、皆に対して平等な態度だった。やはり先生が良いと、当然クラスの雰囲気も良くなるもので。
 六年生の時のクラスは、とても仲が良くなった女の子もいたし、気が合って好きな男の子もいたし、私のおかしなニックネームのおかげで私は一瞬人気者になって、とても楽しかった。一クラス45人前後の時代だったので、一つのクラスで色々なタイプの子がいた。やんちゃなタイプの男の子もいた。いじめられている女の子がいたら、先生は皆と誠実に向き合って話し合った。おかげで全体にまとまっていたクラスで、休み時間にはクラス全員で遊ぶことも多かった。先生が混じることも時々あって楽しかった。
 そんなある日、先生が遅刻したようで、朝の会(朝礼のこと)にも来ない。日番(日直のこと)の連絡事項も終わり、手持無沙汰になった私たちは「自習でもするか?何する?」と言い合って、朝の会で時々歌を歌うことがあるから、皆で歌を歌おうということになった。何もしないで騒ぐより、何かをしようとする自分たちはエライよなあ〜!といった雰囲気に包まれてきて、皆の気持ちが高揚してきた。
 そこへ「カエルの歌を輪唱しよう!」と男子の提案。
 あはは! 皆が笑って、そうしようそうしようと盛り上がった。6年生にもなって今さら‘カエルの歌’である。机は大体二列でひとまとまりだったので、だいたい4分割だったかな。ちょっとやんちゃな男子が皆の前に出て、「ここからスタートで、次にこのひとかたまりで……」とか説明してさっさとまた席につき、せーの!で始めた。「カエルの歌が〜」「カエルの歌が〜」と順番に輪唱した。そして4組目が「クワックワックワ!」と歌い終わって、さわやかな気分になったところへ、先生のバタバタとした足音が聞こえてきた。
 「ごめんね〜!!遅れてしまいました〜!」と飛び込んできた先生に対し「先生、自習してたで」と得意げに言う誰かとクスクス笑う皆。「えっ?ホント?」と驚く先生に「ウン、皆で歌うたってんで」とまた得意げに男子が口々に言っている。さっきの見事なカエルの歌の輪唱を思い起こし、私もつい笑ってしまう。みんなのニコニコ顔とクスクス顔、そして何となくクラス全体の達成感に包まれた雰囲気に、先生も「へ〜」とニヤニヤしてまあ良いかってな感じだった。
 私はこの思い出がとても好きで、時々思い出してはいい気分になってしまう。