新しい家に住んで最初の年は、庭のことまで手が回らなかった。
 木を何本か植えてもらい、ただその様子を見守った。
 最初に梅が来た時は本当に驚いた。もう少し枝が張り、高さがある「木」らしい状態で届くと思ったのだが、植えられたのは、40センチほどの一本の棒であった。「これが梅?」とガッカリした。でも育てていけばきっと素敵に梅が咲くのだ。という願いむなしく、何年も咲かせていない。これについてはこれから書いていく。
 雑草は少し気になって、母が訪ねてきた時に、息子と三人でせっせと抜いた。でもそれだけである。空いている部分が広いので、どうしてものかと思いつつ、とりあえず雑草は抜いた。
 その後、一人でもちょこちょこ抜くようになったが、中でもススキが厄介で、根よりずっと上の方でブチブチ切れるため掘っていくと、でっかいショウガ大の根が、なかなか深い所で掘り起こされる。相当ムキになって抜きまくった。そして何度かぎっくり腰になってしまった。
 「引越しをすると、体調を崩すのは昔から言われていることですよ」と鍼の治療をされながら言われた。
 しかしそうやって雑草を抜きつつ、内心では、アパートのクセが抜けなくて、庭で何かやっていると、どうも周りから見られている感じがして落ち着かなく、庭に出ることが億劫でもあった。
 夫は野鳥の餌台を置きたがり、とりあえずと太い杭を一本買って来たが、さすが「ドリルで掘らないといけないくらい固い土地」なだけあって、全然刺さらずに挫折。
 そして翌年には、またも雑草抜きを熱心にしていると、砂が舞い始めた。庭の端に木を植えていたものの、それ以外は何も植えておらず、雑草を抜くと、ただの土がむき出しになり、乾燥状態になった土が舞う。なにこの砂漠みたいな庭は。と思って雨を願いながらしばらく眺めていると、今度は雑草がにょきにょき伸びてくる。気が付けば、駐車場に土というか砂が、のり面の庭から流れ込んでいる。ほうきで掃く。それがかなりの量で手にマメができる。痛くてまた眺める。雑草が生えてくる。必死で抜く。砂漠の庭が出来上がる。雨で駐車場に砂が流れ込む。これを繰り返しているうちに心底いやになって「庭中をコンクリートで埋めてやりたい!!」と夫に訴えたことがある。アンガールズ田中の母親が、雑草を何とかしてやろうと庭に火を放ってしまった過去があり、それを聞いた時は思い切り引いたが、そのエピソードを思い出し、気持ちを少しは理解してしまった。
 ハーブを植えると良いという情報を目にして、何株かハーブを植えてみたが、土が良くないため、うまく広がらなかったし、美しいのか汚いのかよくわからない状態になった。大嫌いな虫もたくさんいて、木の葉掃除や雑草抜きの時に思わず「フワッ!」とか「ひえっ!」とか声が出てしまい、本当に泣きそうだった。これをすべて退治することは、外の世界である以上不可能だと一年後くらいに気づき、それからは目を細めたり焦点を合わなくしたりして、「なんかいるなあ」と見なかったことにしている。