札幌ドーム自体は、息子が幼い頃に何度か来たことがあるが、久しぶりに来ると、やはりその大きさに圧倒され、屋根があることの不思議な感覚と、人工芝による強い緑色が印象的である。
 席は、安いところを予約して取ったのに、何だかすごく前の方で、こんなに近いの?と驚いた。すごく前だよ、前!!と興奮しながら席についた(もっと前にも席があったけど)。慌てて晩御飯を買いに行ってみたが、美味しそうだと思った所は長い列ができているか、売り切れていたので、どこにでもあるファストフードのハンバーガーを買った。
 夫は、昔はなかったビールの販売の仕方を楽しみにしていた。背中に背負ったタンクのような物から、ホースみたいな物が伸びて、ブシューッとビールが出てくる。前はあんなのなかったよなあ。そしてその販売の売り子は多くが女性スタッフである。あのスタッフをしていて有名になったタレントもいるくらいだ。ああ時代は変わるなあ。
 売り子さんからビールを買ったり、息子の飲むジュースを買ったりして準備は万端。
 試合が始まる。
 試合中は、さらに時代を感じた。いや、ドームで室内だからなのか。電光掲示板にあらゆる情報が載る。打率や打点、ホームランだけでなく、対戦ピッチャーとの戦績など細かくたくさん数字が並ぶ。選手の趣味や好きな物事、ツイッターのメッセージも載る。何なら親切に選手たちの応援歌までちゃんと歌詞が載る。最近の応援歌は単純でなく、「かっとばせー」って言うまでのメロディーも長いし歌詞がたくさん。時々「ジャンプ」とか指示まで出ちゃう。別に内野なのでジャンプする必要もないけど、応援の指示がそうやって電光掲示板で出るものだから、そっちも見ながら試合も観ながらで、とても忙しい。
 最初はその場の空気にのまれて何となく半笑いだった息子も段々馴染んできて、そうやって応援していると、義弟がいつの間にか、応援用のバットを二組買ってきてくれた。夫にも時々持ってもらったら良かったのに、私はそれを最後までどうしても手放せなかった。ごめん、夫。
 試合は、途中まで電光掲示板によるパフォーマンスに圧倒されるばかりで、日ハムも対戦相手オリックスもなかなか点数が入らないし、何となく気が散って集中できないでいた。
 そしてオリックスに6回と7回だったか、あっけなく1点ずつ入った。ピッチャーは1、2回の頃と違って、どんどんボールが先行していたので、観ていてもどうにも落ち着かない。そして8回になった時、3番からだったか。とにかく打順が良いし、もうこの後はないなあと思っていたら、3点入った。代打が打ち、代走が盗塁し、どちらも功を奏したのだ。もう大盛り上がりである。とてもコンパクトな点の取り方。絵に描いたような攻撃だった。
 義弟が隣に座る私の息子に、喜びの握手を求めたのだが、息子が「え?握手?」とか戸惑っていると、私の反対側の隣に座っている夫が手をにゅーと伸ばして、持っていたハンバーガーを渡した。「え?ハンバーガー?」と笑う義弟に爆笑したが、夫はその時気付いておらず、大真面目だった。後で話すと恥ずかしそうに「ああそうだったのか」と笑っていた。