幼い頃大好きだった自転車が、今はあまり好きではない。
 大学生の頃に兆候があった。前回書いた内容だと、大学生の頃は乗っていないことになっているし、実際に「自転車」に乗ったわけではない。私が大学生の頃に乗っていたのは「エアロバイク」である。そう、バランスとか実際に乗れる乗れないの問題ではない。あの「サドル」の部分なのである。
 大学生の頃に、体を動かしたくてスポーツクラブに入会した。水泳をしたり、ストレッチや筋トレをしたり、自由である。シャワーやお風呂もついていて、終わった後もサッパリできて良い所だった。そこは兄が入っていたので、安心して私もと入ったのだ。最初だけ、目的を聞かれたり、それによってマシンを紹介されたりする。太ももとお尻の太さに当時からコンプレックスを抱いていた私は、ジムではエアロバイク中心にトレーニングをすることを勧められた。椅子の高さとか足を曲げる角度とか指導され。しかし何にせよ、サドルが痛くていやだった。30分くらいゆっくりこぎ続けるのだが、とにかく座り心地が悪い。股が痛くなる。怖いなあ〜怖いなあ〜、あ、違った、痛いなあ〜痛いなあ〜と思っていたら、目の前にプールが現れ、気が付いたらプールで熱心に泳いでいたんです。
 というわけで、プールばかりになって、ジムにはいつしか足が向かなくなった。
 結婚して子供ができて、息子が補助輪を取る時、私は父親のことを思い出して一生懸命付き合った。ああいう時、夫は、グズグズ言う息子に付き合いきれない。うまく乗ってもらおうとあれやこれや言い過ぎて、そうはいかない息子は、ますます不機嫌になる。そうやって息子はどんどん嫌がり出すので、私が担当することにした。6歳で息子は補助輪が取れて、息子も自転車に夢中になった。
 息子が補助なしの自転車に乗れるようになると、今度は夫の出番である。二人で自転車に乗ってあちこち長旅に出かけた。それはそれは微笑ましかった。時には私を誘ってくれるのだが、私が夫のカッコいい自転車に乗ろうとすると、夫の自転車のサドルが痛い。腰かける位置を探り、バランスを取っているうちにコケてしまい、二人に気が付かれず、もういやだと一人イライラした。スキーと似たように経緯なのである。
 そして、息子が中学生になり、最初こそバス通学を続けていたが、自転車通学をしたいと言い始め、自転車屋に買いに行った。その時に試乗させてくれたのだが……。息子が乗り、夫が面白がって乗っていると店員さんが「奥さんも乗ったら?」と言う。アラ良いの?楽しそう。と気軽な気持ちで乗ったのだが……!!
 だがしかし!!ユラユラと不安な出だしを乗り越え、少し楽しく風を切り出すと間もなく股が痛くなってきた。なんだよ、私は自転車に乗ってはいけないのかと自分の体に苛立ちを覚えるのであった。
 どうも私の体は自転車向きではないと思っている。それとも自転車に乗っている人は、乗っているうちに股が鍛えられて頑丈なのだろうか。とにかく自転車に乗って移動する人は、羨ましい限りなのである。