息子は中学生に入り、「僕、爪かみが減ったよ」と、嬉しそうに爪を切るようになった。教室の環境からも、鼻炎はほとんどなくなった。どもりも、まだあるのに「僕、どもらなくなったよ」と、気にしなくなった様子。
 全部、周りの環境、雰囲気でそうなったのではないかと思う。
 先日、中学生になってからの先生と面談があり話したが、息子が爪かみをしているところなんか見たことがないと驚いていた。どもりのことも取り立てて言われなかった。やはりよく色々落とすことは言っていたが、根気よく事務的に注意していきますと言ってくれていた。色々と息子の良い点を話してくれたし、周りの人たちとどのようなかかわり方をよく見ていたので感心してしまった。
 「小学校の頃って、すごく殺伐としていたんだなあって思う。」と、息子はそういうことを言う。給食のおかわりも、小学校の時の先生のクラスでは奇妙な風に言われていたらしく、隣のクラスの子たちが「おかわり残ってないですか」と聞きに来た時は「そういう雰囲気が羨ましい」と言っていた。今はそんなことはなく、おかわりしたい者同士でよくジャンケンしているらしい。他に、小学生の時は、休み時間に先生がいなかったことを言っている。何故いなかったのか不思議だったけど(他のクラスの先生はいることもあったのに)中学生となった今では、いないことがおかしいとハッキリ思うようになったようだ。授業もつまらなく、先生のエピソードは、四年間持ってもらった中でも10もないのではと言っていた。よく耐え続けたものだと思う。本人は、「こんなものだ」と思っていたから、当時はそれほどまでには苦痛ではなかったと言うが、よく学校に行きたくないと訴えてはいた。そんな先生の元でそんな風に思うなら休めば、と思うのだが、息子は結局頑張って通い続けていた。ただ、体調はしょっちゅう崩していた。アレルギーがひどかったのも、ストレスだったのではと、医者を始め多くの人に言われている。
 今でも、周りの人に色々言われた時、その言葉に悪意があるのではとか、受け止めるのが辛いとか思ってしまうことがあるようで、それを聴いてやるのも結構胸が痛む。でも、今のクラスの雰囲気は良いので、皆がその場その場で発言していることと、息子に対する感情とは別だとわかり始めているようである。又、先生を中心に和やかなムードのクラスが出来上がりつつあるようで、安心している。最初の数か月は心配でならなかったが、毎日のように話を聞いていると、周りの環境のおかげで、息子を安心して送り出せるようになった。
 小学校の生活に関して、良いことなどなかったと思うのだが、三つだけ良かったと思う点をあげるならば、今がそうではない楽しい学生生活であることをしみじみと実感できていることが一つ。少々大変なことがあってもあの環境よりはマシだと思えるらしいことが一つ。そして、私が息子のために動いたことで、日本の一般的な公立小学校との距離感をわかり、周りの母親たちとの距離感がわかったという、勉強になったことである。それは、今後息子に何かあった時に、周りに助けを求めつつ、先生に働きかけようという自信につながったことは確かである。