合格発表の郵便が届く日。
 土曜なので、いつ頃郵便屋さんが来るのか知らないから、何時間後にはとかいう目安もつけられないし、覚悟もできない。起きて一通り用事をこなし、本を読んでいたら、ピンポンと鳴った。郵便屋さんだ。大きな封筒を持っていたら合格なのかなと思い、ピリッと緊張感が走った。
 「親展」。
 あれっ。封筒が小さい。一瞬がっかりしそうになったが「あっそうか。願書と一緒に合格発表の封書を自分で同封したのだった。この大きさは当然か。自分で書いた宛名と、自分で買って貼った切手だ。」と思い出した。しかしそう思ったそばから、「やっぱり小さい」と思ってしまう自分と、「あっそうか私の字だった」と思い返す自分の気持ちが何度か往復してしまった。
 息をのみつつハンコを押し、玄関でそわそわする息子に手渡した。
 「分厚いよ!」
 息子がワクワクする声で私に言う。……そうかもしれない、でもわからないじゃないか。
 「そうだね、でもまだ見ないとわからないよ。早く開けようよ。」
 さっさと私が破ってしまいたいと、はやる気持ちを抑えて息子に促す。
 「えっ。もう開けるの?」「こういうのって丁寧に開けた方が良いんだよね。」と珍しく慎重に手で開ける息子に、ハサミを渡そうとしたが渡す直前に開き、アラ必要ないねと右往左往する。
 開いて中身を出すと、たくさんの、三つ折りにされた紙が入っている。
 「……どれを見たら良いんだ?」
 二人で一瞬、幾つもある紙の束を眺める。
 「どれかに書いてあるんだからどれでも良いよ。」とまた促してみる。
 最初に手に取った紙を上にめくると。
 三つ折りになっていて、まだわからず、二人で一瞬顔を見合わせて笑った。
 「まだわからないね。」
 そして、下の部分をめくると。
 「合格」
 という字が目に飛び込んできた。
 「やったーー!!!」
 二人で飛び上がって喜んだ。
 息子はまだパジャマだった。その上、飛び跳ねた拍子に何かに足をぶつけて、顔を歪ませた。抱き付きたいのに、歪んだ顔で「ちょっと待って。」とか「痛い〜。」とか言っていて、やきもきする。「ぶつけたの?」「痛い」とか言いながら二人で結局抱きあって喜んだ。
 本当に嬉しい瞬間、私はこんなにうひゃあああ〜!!!と喉を開いて喜ぶのだなと思った。それは自分が中学入試の合格発表の時も同じであった。