息子は面接を心配していた。面接も、その学校では結構重要視していると噂されていた。
 なので、「どもったら、減点対象になる?」と聞いてきて心配しているようだった。
 ここで何度か書いたことがあるが、息子はプレッシャーを感じるとどもりが強く出る。
 しかし、「ミツ君は、その言葉の出だしより内容がすごく面白いんですよ」と言ってもらった幼少期を思い出す。又、家で一度だけ面接の練習として色々質問してみた時に、息子の性格や考えがわかる様々な返答がとても面白かったのを思い出した。
 「どもっていることで減点になるようだったら、その程度の学校だと思う。ミツは、大人が話していても面白いと思う返答をする。だから自分の考えたことを自分の言葉で語れば良いよ。」と言った。しかし「じゃあまったく同じレベルの子がいたら、どもっている僕の方が落ちる可能性がある?」と食い下がる。一瞬迷ったが「それはない。」と言った。「それで落とすようなら、その面接官が悪かったと思いなよ。どもることで減点なんて、つまんない考え方だよ。母さんはミツと話していて面白いと思う。」と、自分にも言い聞かせた。
 夫はその場におらず、どもりの話もしていないが、「ミツがどういう結果になっても、お父さんはミツの良さをよく知っているからね。」と、度々声をかけていた。
 果たして、面接が終わってから話を聞くと、やはり息子らしい返答をしたようで、その受け答えを聞いて、これでどもりを気にするような面接官だったら、そんな先生、こちらから願い下げだと思った。
 試験も作文も「手応えあったよ。しっかりできたから悔いなし。」と言っていて見直しもできたようだったが、じゃあそれで点数が良いのかといったら、それはまた別問題だと思うので、油断はできなかった。悔いがないのは結構だが、結果がどうだかはわからない。本人もそう言っていた。心配していても仕方がないので、結果がわかるまでの一週間は、時々カレンダーを見ては「まだだなあ」「来週の今頃は」「何日後には」とか思うだけであった。
 発表は郵送とのことであった。○日郵送、と書いてあるが、○日に着くとは書いておらず、でもなんとなく郵送の日にわかるのではといった雰囲気が流れていたので、郵送の日の朝、「ああ今日だなあ」と思って起き上がった。
 平日なので、息子が下校、帰宅するちょっと前に、郵便配達の人がやってくる。しかし、いつもの時間を過ぎても一向にやってこず、帰宅した息子も「えっ。まだなの?」と言ってから玄関でしばらくグズグズ寝そべっていた。たまらず郵便局に電話して、この地区の配達は、今日はもう終わったのかと問い合わせてみたら、多分終わったとのこと。5時までに届かなかったらもう今日はおしまい、てな感じだった。その日も塾があり、普段通り通った。「みんなには届いてたらどうする?」とか笑いながら向かった。
 塾が終わる頃に迎えに行くと、先生とバッタリ会い「まだでしょう?」と言われた。「今日届くと思ったんですけど、誰の所にも届いていないので、安心して下さい。でも、こんなこと初めてなんです。だいたい、郵送と発表されている日に着いちゃうんですよ。」と。
 で、翌朝。「今日だなあ」って……。デジャヴかよと思いながら起き上がった。