塾さえ行っていれば受かるとは思わないが、それ以外の勉強を、息子はほとんどしなかった。ただあまりに漢字がお粗末なので、気軽にできそうなポケットサイズの漢字の問題集を買い、練習させた。誤字脱字には厳しい学校だと噂に聞いたのも理由の一つだ。
 作文に力を入れなければいけない試験の内容であった。
 だから、塾では、作文にとても力を注いでくれたようだ。自分の意見をまとめる練習。また、色々な物事について常に考えることを要求されたようである。自分のことや周りのこと、社会のこと、最近のニュース。それについて意見を述べ合い、文章にまとめる訓練。さらに、先生が文章を1〜2回読み、それについてのメモを取った後、設問に答えていく訓練。こういったことを重点的に練習したらしい。
 いわゆる試験問題の内容は、学校の歴史が浅くて、傾向がわからないのだと、塾の先生も困っていて、過去問題に取り組むことにそれほど意義はないように言っていた。国語算数理科社会と、科目が分かれているわけではなくて、長めの文章があり、それについて、漢字を問われたり、計算を求められたり、理科や社会の知識を求められたりする。そういう問題が、大きく分けて3〜4問ある。中には家庭科や音楽に関する問題も出てくる。つまり、総合的な学力が求められるわけである。過去のそういった問題を見せてもらうと、私のようなタイプはちょっとやる気を失くす。一度に色々な科目が頭をめぐり、それだけで私は面倒くさくなってしまう。私の中での「問題をとこう」という意欲を、そぐ形式である。ここはさすがに問題傾向がわからなくても、慣れが必要なのではと思った。塾では、こういった過去問題を実際のテスト形式にしてあまりやらないようだったし、時間配分にも慣れておく必要があるのではと思い、家でやらせてみることにした。
 すると、見直しをする時間があまりなく、うっかりミス連発であった。
 なので、家にある年数分の過去問題を全部やろう、それで時間配分に慣れようと持ち掛けた。
 これがなかなか取り組んでくれず、試験5日前くらいになって、さすがにそんなに悠長にしていられないでしょと発破をかけた。間際になってじたばたするのも良くないと思うのだが、息子はずーーーっとじたばたしてこなかった。必死になって勉強したこともなく、過去問題もしないで、ただただ「試験はストレスだなあ」「僕はストレスで疲れてるよ〜」と訴えるばかりで、何に対してのストレスなんだよとこちらが苛立った。
 そして5日前にくらいに、ようやく重い腰を上げて、過去問題に取り組んだ。5、4、3日前に3回分済ませると、時間配分にはすっかり慣れた風で、見直しもしっかりできるようになったらしかった。……あくまでも本人の自己申告。私の役目は○付けだけなもので。
 漢字の練習も、3日前までに3〜4通り終わり、あとの二日間は、自分の思うように勉強して過ごせば良いよとまったく本人にまかせた。やっていた雰囲気はなかったが、本人は納得づくのようなので、私ももう良いやと思って放っていた。