息子が中学受験をしたので、自分の当時のことも思い出した。
 息子の中学受験と言っても、都市での私立中学受験とは、事情が違うので、息子の方から書いていきたいと思う。
 まず、ここは田舎である。今住んでいる県の小学生学力レベルは全国的に見て低い方らしい。周りに私立は一校しかなく、受験勉強を特別にするということではなく、親子面接と試験はあるようだが、塾に特別通わないと受からないような学校ではない。そして息子が受験したのは私立ではない。この地域にやはり唯一の公立の中高一貫校である。10年くらい前にできた学校で、息子が三年生の頃に「僕は、そういう学校に行きたい」と自分から言い出した。仲良しの友達が、親に言われて言い出したのを、息子が真似しているだけだろうと最初は聞き流していたが、理由を聞くとそういうことではなかった。そういう学校があることは、友達などから聞いて知ったようだが、行きたいと思った理由はその友人云々ではなかった。そもそも、友達と同じとか比べるとか、人との比較を基準にしないタイプの子なのだが、その時にすごくハッキリと理由を述べてくれた。
 息子は、3年生の頃から隣の市の天文クラブに通っているのだが、そこで学校の友人たちとは違うタイプの子たちと出会った。大人から見たら「落ち着きがなく」「好奇心にまかせて」「質問ばかりする」という、あまり褒められたような子供たちではないのかもしれないが、私にとってはとても可愛い子供たちが多かった。先生も扱い慣れていて、対応がとても上手だった。学校では窮屈な思いをしていた息子なので、こういった場で発散すれば良いと思っていた。しかし、息子にとっては「ここが特別」なのではなく、「こういう仲間が学校にもほしい」と思ったようだ。それは、そういう場所を自分で探して選べばきっとあるのではという気持ちにつながったようだ。学校で仲良しの友人は少なかった。それなりに喋ったりふざけたりしても、息子が遠慮なく楽しく話せるのはごくわずかであった。
 「僕は、自分と似たタイプの友達がもっとほしいんだ。多分その学校だと、今の小学校よりはこういうタイプの子が多いんじゃないかなあって思うんだよ。」
 三年生の少年がそうハッキリ主張するのだから、その小さな胸の内を思って「じゃあその気持ちがずっと続くようであれば、受験したら良いね。」と話していた。
 「塾に行きたい」というようなことも言ったが、自分の時間が大事な息子に、早くから塾に行かせるのはどうかなと疑問に思い、話し合った。6年生後半になってから塾に通い、合格した友人の子供もいたので、その学校に通いたいという気持ちが持続していたら、6年生になってからでも間に合う。そんなのんびりした地域です。息子は一刻も早く通いたがったが、一方で、やっぱりゆっくりする時間も大事だと自分で言っていた。自由にのんびり遊ぶ時間がある方が良いと。まあ当然でしょう。
 そのため、6年生の忙しい生活に慣れてきた5月か6月頃から通い始めることにした。
 息子にとっての塾は、学校よりも先生や生徒たちと相性が良いようで、塾の宿題なら進んで終えて、楽しく通った。