『フットルース』を、この歳になって、また観ることになるとは思わなかった。
 初めて観たのは、映画館ではなく、数年経ってビデオを借りた時だった。中学三年生の頃だったと思う。音楽がとても気に入り、サウンドトラックを買った。当時、好きな曲を口ずさみたくて、英語でも歌詞を一生懸命読んで歌えるようにチェックを入れていたが、このサントラの多くの曲もそのように練習していた気がする。
 『フットルース』を見る経緯についてだが、最初に夫が『ガーディアンズ・オヴ・ギャラクシー』を観た。その主人公が『フットルース』に出ていたケビンベーコンの大ファンという設定で、それが主人公の境遇を象徴している。夫も「聞いたことはあるけど観たことはない『フットルース』を観てみたい」と言い出した。
 「緊張する怖い場面は特にない、気楽な青春映画だよ」と30年近く前の記憶を引っ張り出してその程度くらいは言ったが、あまりよく覚えていなかった。ダンスのシーンがカッコ良いけど、青春映画だから確か恋愛も混ざって……どんなだっけかなあ。どういう筋か大きくはわかっていたけど、細かいエピソードや描写は、その後繰り返して観たわけでもないので、覚えていなかった。
 そして早速、家で観た。
 観終わった後の夫の最初の感想が、笑い飯 西田ばりの「思ってたんとちがーう!!」だった。夫は、面白かったと言いつつ、想像していたのと違ったらしく、「きっとコメディもので、ダンス対決みたいなシーンがたくさん出てくる」のを想像していたらしい。ああそうだった、恋愛入ってるよーと言うのを忘れていた。いや、青春映画につきものの恋愛とかそんなことだけではない、こんなにガッチリ親子関係について描かれているだなんて、全然覚えていなかった。多分当時の私もそこは感じなかったのではないだろうか。当時は、中学三年生の頃だから、画面の中の恋愛とダンスに夢中になって、他のことは頭に入ってこなかったのかも。心に傷を負って、偏った考えを持ってしまったカタブツな父親……くらいにしか思っていなかった気がする。ダンスやロックが駄目だなんて考えられない。人は自由だよ。
 ……くらいかな。
 ところが、今回観てみると、多くの親に観てもらいたいシーン、心に刻んでほしいセリフが幾つもあった。親に対して心の叫びを訴える子供。夫の考え方に一石を投じる奥さん。一石と言っても、何度も色々な言い方で伝える。
 こんなに素敵な親子関係モノの映画だったんだ。しみじみしちゃった。
 他にですね、やっぱり今になって響くのは、田舎町に引っ越してきた都会っ子というところである。
 これもまた当時の私には、それがどういうことかピンと来ていなかったように思う。