ある晩、寝ようとした時、息子の部屋の窓が開いていたことを思い出し、「入るよ」と声をかけて、息子の部屋に入った。
 息子は何故か「やったー」と言って、窓を閉めている私に声をかけてきた。
 何か話したかったんだな、と思い、耳を傾けると、
 「ねえ、反抗期って、ずっと反抗しているの?親に対してずっとうるさいとか、365日いやだと思い続けるの?」
 と聞いてきた。
 最近テレビで、ちょっと親離れしている子供の話を観たので、息子なりに何か感じたのかもしれない。それを観ている夫と私は爆笑していたんだけど。
 息子は、ずっとそうやって親に対して反抗心を持つということがまだ信じられないらしく、心配だったようだ。今更なんなんだよ、1歳半から4年生半ばまで、ほぼずっと反抗期のようなものだったくせに。と思ったが、そうやって心配しているすごく息子が愛しくなった。「そんなことないよ。」
 息子はまだ続けた。「甘えと反抗が繰り返しやってくるの?」「普通に喋ったり、子供の方から話すの?」
 私は自分が4年生くらいの頃を思い出していた。反抗期に入った兄を見て「私はあんな風にならないよ」と母に言い、その約束を守ろうとムキになり、自分の意識を抑え閉じ込めてしまった。自分で勝手に決めた約束を、頑なに守ろうとしてしまった。
 「そんな感じだね。うるさいなあ、うっとうしいなあ、今日は喋りたくないなあって日があると思うけど、話したいなあって思う日もあるし、そういう時間もあるから、普通にしてて良いよ。全然何も話さないでだまーってるって子もいるし、あまり口うるさくない親だと、そんなに反抗する機会もないから、ただ何となく喋りたくないなーって感じで過ぎていくかもしれないし、人によるよ。」「お母さんも、この前の番組を観てわかるなあと思ったけど、自分のお父さんがうっとうしく感じで、触らないでとか思ったけど、ずっと好きな気持ちは変わらずにあったよ。」と説明した。
 さらに「自然にしていたら良いんだよ。その時期を我慢して、大きくなってからそういうのがやってくるより良いよ。」と話すと「その方が、もっと大きな反抗となってやってくるの?」と聞いてきた。また私は自分のことを思い返した。「そうだね、大きくなるっていうか、長くなるかな。長くなる分、苦しみが辛いよ。それなら来るべき時に、反抗期を過ごした方が良いよ。数年も経てば、「あれ?」っていうくらい、普通に喋ったり一緒に出掛けたりできるようになるものだよ。」と話した。
 息子は急に、嬉しそうな顔をして、じたばたした。安心したといった感じで、興奮していた。小さな不安を心に積もらせていたんだろう。
 きっと数年後、息子はムスッとして、ちょっと心配するような声をかけると、うざいとかうるさいとか言うかもしれない。そんな時、私はこの日のことを思い出そう。おでこを撫でられて気持ちよさそうに安心しきった顔で、私の話を聞いていた息子の顔を。