「ミュージシャンて、なんであんなにモテるのか」と、テレビでどなたかが言っていたので、えっそうなの?と思って、思い出したことがある。
 私は奥田民生が好きだけど、彼の普段喋ることや日常とかには、興味ないです。それならさまぁ〜ず三村の方がよっぽど興味あって好きです(笑)。でも、奥田民生が歌っている時は、彼の歌詞や、そこの含まれる考え方とか感じ方、さらには歌い方や声の迫力とか雰囲気とか、ギター弾いている様子とか、彼をとりまく様々な物が大好きです。
 歌っている時ってことは、やっぱりミュージシャンは歌っているだけで、それだけ魅力的なのでしょうか? 私にはよくわからない。でも、歌ってギター弾いている間は、恋心にも似た気持ちを持つのだから、歌っている人や楽器を演奏している人は得なのかな。
 で、ふと思い出した「ミュージシャン」がいる。その人に関しては,全然名前も知らない、今何しているかも知らない。
 「キャベツの彼」。と私は心の中で呼ぶ。
 私は、大学生の後半頃から、ケーキ屋でバイトをしていた。色々事情があり、大学を卒業後も、次の仕事が見つかるまでパートとして、少しの間、そこのケーキ屋で働いていた。
 そこのケーキ屋は、デパートに入っていたので、デパートの都合上、別の支店で、研修をする。支店ではケーキコーナーの後ろで同じ会社が喫茶部門をやっていて、後ろでつながっていた。で、ケーキ屋で働く先輩女子たちに、なんだかんだと言われ、からかわれているうちに、キャベツの彼が私に気があることを知ったのだ。何故「キャベツの彼」か。
 彼がキャベツの千切りをしていたイメージしかないからだ。
 って、私が思っているだけで、他にも色々していたんだと思うけど。キャベツの千切りが少なくとも当時の私よりは上手かった。彼はミュージシャンになりたかったらしく、バイトの合間に、ギターの練習をしていた。
 で、私は全然彼に興味がないどころか、女子たちにからかわれるまで、存在すら気づいていなかった。でも、言われてみると、販売中、ふと視線に気づくようになった。彼は、時々私を見ている!ヒエッ!!
 さらに、休憩しようと、店の裏に行くと、やはり休憩中の彼が、エレキギターをひろひろ弾きながら、ふと私を見て、さっとうつむく。ヤダ、照れてるんやん。でも喋ったこともないのにぃーーー。私の何も知らないでしょう、私の何が良いのよ〜、喋ったらイメージと違うと思うよ〜?!いや、そもそも、どんなイメージかすらわからないけど……もう色々グルグルしちゃって、通り過ぎる時に目が合ったら、お辞儀をするのが精一杯。
 研修が終わる頃「彼、アナタの髪のゴム、欲しいって言ってたよ。」と、周りの女子たちが言った。え〜こんなの幾らでもあるよ、こんなのでよければどうぞ。安易に渡すと、長髪の彼はそのゴムを翌日以降つけていた。ヒエッ!!
 最後の日に、一応声をかけ、挨拶をしておいた。こっぱずかしかったし、ちょっと怖かったー。でも、その挨拶だけで幻滅されたかもとか思う。
 でも、ミュージシャン(??)に好かれた最初で最後の、貴重でちょっと笑える経験でした。