息子が小学校5年生になって、体がずいぶん大きくなってきた。140センチ近いし、何と言っても、息子なりに手足が伸びてきている。産毛だけど、うっすら鼻の下などに生えてきているのを見て、ああこれが段々濃くなっていくのかなあと思う。
 まだまだ可愛いんですけどね。でも、そういうのを見て、ふと思い出した男の子のことを書きたくなった。
 そのO君は、6年生の時、初めて同じクラスになった。それまでどのクラスにいたのか、そもそも、前からいたのか、6年生からの転校生ではなかったと思うけれど、それも自信がない。少なくとも、私が3年生で転校してきた時からいた子ではなかったのではと思うくらい、まったく記憶にない。存在を知らなかった。ひどい。まあでも今と違って、1クラス45人程度が5クラスである。知らない子がいてもおかしくはない。
 で、6年生のそのクラスで一緒になった時、彼は、背が大人並みにすごく高かった。髪は丸刈りが少し伸びた感じ。まあほぼ丸刈り
 何故、息子を見ていてその子を思い出したのかと言うと、息子の鼻の下の産毛である(笑)。O君は、もう産毛より結構濃かった。まゆ毛も濃かった。まつ毛も濃かった。背はひょろひょろと高くて、手足もやっぱりひょろひょろ長かった。いわゆる「カッコいい」感じではなかった。
 小学生?と聞きたくなるようなオッサン臭さをにじみだしている子だった。「子」と言って良いのかと言うくらい、「子供」とは遠い距離にいる感じだった。
 非常に申し訳ないのだが、当時はそれが、どうにも笑えて仕方なかった。意地悪な感じじゃなくてね、楽しくてね、つい構いたくなるというか、話しかけたくなって。
 彼はあきらかに、自分の体を持て余していて、いつも背中を曲げて、長い手足を小学生の使う机に窮屈そうに対応させていた。なんなら横向きに座って、机から、どうしても脚がはみ出るんです、って感じで座っていた。
 彼は、何故こんなにオッサン臭いのかと、私と、私の仲良しの友達はおかしくて仕方なくて、その小学生らしからぬ風貌に「何でO君てそんなに背が大きいの?」と、赤ずきんちゃんばりに単純な、見た目の質問をしてしまっていた。でも彼は、低い声でおっとりと「知らん」と言って、ちょっと恥ずかしそうにニヤっとするのである。それがまた彼の器の大きさを感じて、小学生らしくない、と、友達と笑ってしまうのだ。
 彼は何かと動作もモッタリしていて、鈍くさくはないのだが、悠然としているように見えた。でも決して堂々とした、というのではないのがまた何となく見ていて可笑しいのだ。
 彼が機敏に動きでもすれば、それもそれで可笑しかった。
 まあ失礼ながら、何となくそのキャラクターが面白くて、友達と私のお気に入り、笑いのツボだったんです。
 O君はきっとあのままオッサン臭さを何となく漂わせたまま中学生になり、高校生になり、大人になって、その雰囲気に、やっと年齢が追い付いてきたことだろう。もしかしたら、今ばったり会ってもわかってしまうかもしれない。