毎日毎日、何よりも朝起きるのが辛くて、特に冬は、布団から出るのがいやだった。でも、目覚まし時計をギリギリにセットしてあったために、目覚まし時計が鳴るとすぐ思い切って、バサッ!!!!!と布団をめくることに決めていた。布団を思い切りめくると、起きよう!という意欲が湧く。ただし、低血圧のためか「意欲が湧く」と書くほどには元気一杯に起き上がるわけではない。もちろん低血圧じゃなくても、多くの皆さんが、いったん寝てしまうと起きるのはいやでしょう。起きて、冬ならすぐストーブをつけて、続けてバサッ!!!!!とパジャマの上の方を脱ぐ。こうすると、もう寒くて寒くてすぐ服を着ないわけにはいかない。この二回の「バサッ!!!!!」を心がけることで、朝はその後、猛スピードですべてがはかどるのだった。新聞でも読んだことがあるが、朝起きる時に、早く準備ができるコツのようなものとして「気合い」という回答が一番多かったとのこと。結局、皆そうなのか、気合いなんだよなあ、としみじみしたものだった。
 5分で着替えて、5分で朝ごはんを詰め込み、5分で洗顔、歯磨き。……えっトイレですか?私は自由人だったので、いつどこでも、したい時がする時(笑)。深刻な便秘になったことも滅多にありません。毎日出ているかなんて、学生時代は特に頓着していなかったけど、お腹が張るとか苦しいとかいう経験は、少なくとも学生時代にはほとんどない。一応「ほとんどない」って書いたけどね、本当は記憶の限りでは「ない」。起きたての眠い顔で「おはよう」「いただきます」「ごちそうさまでした」「いってきます」しか言わないで、お弁当をひったくって、まだ眠そうな顔して毎朝出る娘が、もし自分にいたら「思春期だなあ。ちょっと寂しいなあ」と思うだろう。悲しくなったり、イラッとしたりなんてこともあるかもしれない。でも、そんなものなんですよね、仕方ないです。私も、親となった以上、覚悟しておかなくちゃ。
 朝は、電車に間に合う時間でも、何故かすごく急がないと気が済まなかった。必死で駅に向かって走っていると、朝帰りらしき暴走族のお兄ちゃんたちに「ファイト〜!!」と言われて、ヘラっと照れ笑いしたことがある。
 そうやって、朝出て駅に着くまでも、私は毎日、本当に淡々とこなしていたが、なるべく何も考えないように、ただ自分のノルマなのだと思い込むようにしていた。でもそれはすごくすごく嫌いな作業だった。
 今も思い出すのは、冬のまだ薄暗い部屋でストーブをつけた時の情景だ。その時の「今日もいやだ」とかすかに思う気持ちが、すごく辛い。かき消すように「バサッ!!!!!」と、こなしていく。二回電車を乗り換えるうちの一回目までの電車は、人も少なく、静かで、穏やか過ぎて、けだるかった。ボンヤリした皆とボンヤリ乗っている。まだまだ眠いのだ。そして、電車のきしむ音が大きく聞こえる寂しい時間だったのだ。
 愚痴を吐きだしてラクになる私にしては、このことは公表せずにいました(笑)。
 実は毎日すごく嫌だったんです。一人きりで行って帰るわけじゃないけど、気持ちはそれに等しかったこと。時にはどうしても行きたくなくて、仮病を使って「しんどい、風邪みたいだから、今日は休みたい。」と母に訴えると、母もそれを受け入れてくれた。