兄弟姉妹が、親に対し、別の兄弟姉妹と比べて、私とどちらが好き?と聞いたとしましょう。そうしたら、親は「アナタが一番好きよ。」と嘘でも良いから答える。別の兄弟か姉妹が、同じ質問をしたら、「アナタが一番好きよ。」と答える。そうして、兄弟姉妹がいっぺんに来て「私のこと一番好きって言ったでしょ?本当は誰?」と来たら「アラ、皆のことが一番に好きよ。どうしても知りたければ、後でコッソリ教えてあげる。」と言って、また同じことを繰り返せば良い、と言います。
 親として、嘘ではないかもしれないけど、嘘かもしれない。親にとっての真実、そんなことは、実はどうでも良いのです。子供がどう感じるか、それが重要なのです。
 なので、今、息子が欲している言葉を探りながら、簡単に言えば、安心して暮らせるから大丈夫だ、ということを話しました。これからどうなるかなんて、本当は誰にもわからないですけどね。でも、これが、ドンピシャだったようです。いや、本当にドンピシャかどうかはわからないけど。それまで積み重ねてきた会話も、効果あったのかもしれません。
 「母さんが勝手に思っているってことは、誰にも言ってないこと?」と目を輝かせて聞くので、「そうかもね、わざわざ人には言って来なかったね。」と言いました。
 実際に、突然自分を含め、家族の誰かが死んでしまうかもしれない。そんなの考えたくないけど。でも、人は皆、私は大丈夫と、ある程度思っていないと、日常が成り立ちません。皆、わざわざ言わないけど、ある程度はそうやって生きているものだと思います。子供は、今回のことで、自分だけでなく、テレビや新聞を見聞きして、命をおびやかされたり、悲惨な体験をしている人々を可哀相に思ったりして、心をとても痛めています。その気持ちをどう立て直していくか。どんな言葉が響くかは、その子供によると思います。
 息子の精神力は決してヤワではありません。でも、繊細だと思います。今回のことで改めて実感しました。繊細なことが悪いわけでもないし、そこを図太くしなさいと言って、直せるものではない。感じてしまうこと、考えてしまうこと、つい頭に思い浮かぶことを否定しろとは言えません。だから、とりあえず、どう考えて生きていくか、辛い気持ちをどう消化するか、どんな風に日常を取り戻していくか、色々ヒントを出しながら、自分なりの答えを見つけ出してほしいと思います。
 さらに、私は、息子がお腹の中にいる時の話をしました。丁度、2年生の終わりに、お腹の中にいた時から、8歳になるまでの話を、授業で済ませたところでした。でもね、正直なことを言えば、つわりがひどすぎて大事に大事にするどころじゃなかったんだよ。息子に初めて告白しました。この前は言わなかったけどね。食べても飲んでもゲーゲー吐いて、自分が生きていくので精いっぱい。だから、本当にお腹の子が育っているのかなと思ったくらい。でも、ミツは生きていたんだよ、すごい生命力だと思わない?そんなのを乗り越えたから、母さんが元気になって、お腹が大きくなってきても、母さんはあまり特別に気をつけなかったの。いつも通り、水泳もしたし、歩き回っていたよ。それでも、ミツは元気に大きく育って生まれてくれたの。だから、ミツは生命力あるって自信持って良いよ。
 息子は、ますます目を輝かせ、その後、元気になりました