一学年、一学年のことを書くつもりはないのだが、次は、中学二年の時にできた友人のことを書きたい。
 中学一年の時に、フザけたり、秘密を持ったり、思春期らしい悩みを打ち明けられるくらいに親しくなった友達は、何人かいたのだが、クラス替えで、皆と別々になってしまい、中学一年でできたグループの中で、私は一人きりになってしまった。1学年、たった4クラスしかないのに、私は偶然なのか、仲良しが誰もいないクラスに放り込まれてしまった。
 しばらく寂しい思いをしていたのだが、その時に、同じように一人きりにされてしまった子がいた。皆の前ではおとなしかったが、二人で喋ると、フザけて笑ってばかりいるような子だった。色黒で、硬式テニス部に所属していたため、その肌の黒さはますます強調されて、「赤黒い!」と皆にからかわれては、自分でも笑っていた。
 その子は、K、と呼ばれ、部活内での悩みがあり、辞めたい、辞めたくないで、随分と心が揺れていた。登校も一緒にしたり、部活がない時には、下校も一緒にしたりしていた。色々と下らないギャグも二人で作って大笑いしていた。彼女を通じて、中学二年の新しいクラスでは孤独だった私も、お弁当の時間になると、硬式テニス部のグループに入れてもらって、一緒にお弁当を食べていた。ちなみに、中学一年の頃の仲良しさんたちは、バレーボール部で、その中でも色々仲良しは分かれていて、中学二年になると、弁当の時間でさえ、私は疎外感だった。なので、Kに連れられて、硬式テニス部ほぼ全員+私、という浮いた感じでいながら、誰もとがめずにいてくれたために、皆と一緒に弁当を食べていた。
 それでいながら、彼女はその部活を辞めようか常に悩んでいた。硬式テニス部は、上下関係の厳しさでも校内では有名なくらいだったし、同じ学年でも、気が合う合わない、など小さなもめごとが多いというのが、傍から見た印象である。「そんなしんどい思いまでして続けることないんじゃないの?」と気楽な私は、いつもそう言っていて、ちょっとした交換日記のような物にも、そんな人とは別行動にしたら〜?と、今思えば、あまり彼女の立場に立った意見は書いていなかったのかもしれない。とりあえず、彼女の愚痴のはけ口にはなれてたと思うんだけど。
 でも、意志の強い彼女は、自分で考え抜いて、自分で続けることを選んだ。そして、クラス替えと共に、お気楽なことばかり言っている私からは遠ざかってしまった。でも、彼女の好意は、なくなったわけではなく、部活に打ち込み始めて、クラスも変わったし、喋る機会も減ったというだけだったように思う。廊下ですれ違えば、笑顔で「きぃちゃん」と手を振ってくれた。
 彼女の印象的なことは、幼い、幼い頃から大好きだという、小さな枕を見せてくれたことだ。きっと彼女にとって、重大なそれは、おそらく、その学校にいる間の六年間、他の誰にも見せたことがないのではないだろうか。相当使い込んだのだろう、何だか灰色のようになってしまって、絵柄がほとんど見えないようなその枕を、「私の宝物、見せてあげる」と、学校に持ってきて、こっそり私に見せてくれた。うおぉ!スゴイ年季が入ってるなあ!ワハハ!!と私は笑いつつ少し呆れたが、世の中、そんな風に、入眠儀式として大事にしている何かを持っている人って、割と多いみたいね。彼女のお気に入りのその枕と、彼女の気持ち、少し恥ずかしそうな表情、がとても印象に残り、ちょっとほのぼのさせられた出来事でした。