W君は、勉強は普通、運動も普通、だが、そんな風に上手に面白い文を書くこともあったし、鉄棒など特定の物が得意で、何故か陸上クラブ。身のこなしは、特別に抜群なところや敏捷性はなかったものの、結構器用だった。目立つタイプでもないが、単に気が合った。少し変わり者な感じもあったので、全然女の子にモテるタイプでもなかったが、私はお気に入りだった。彼も私のことが気に入っている様子で、授業中に目が合うと、お互いに変な顔して、笑いをかみ殺した。隣りの席になると、授業中だろうが、もうお喋りが止まらないくらいに、話が弾んでしまって、今思えば、なんて不真面目な「良くない」生徒だっただろう。でも面白いくらいに話はつきなくて、フザけてばかりいた。そんな彼は、アヒル好き。ちなみに、今のダンナ、カモ好き。偶然?……偶然だよな(笑)。
 当時、人気者に仕立てあげられていた私は、目立っていたので、W君とフザけようが、もう何だかクラスも公認の仲だったのだが、バレンタインの日、私は何も彼に渡さなかった。別に良いやん、そういうのってさ。とか照れてしまって、ちょっと後悔。彼はきっとすごく楽しみにしていたに違いない。ささやかな小学生の思いではないか。渡せば良かったのにね。W君はしばらく、ほんのちょっとプンってして素っ気なかったんだよね(笑)。
 卒業した後、私立中学に通いだした私は、友達と喋りながらW君を待ち伏せして、「やあ」と、ただ挨拶を交わしたり(周りの男の子たちも「W君、もう少し後を歩いてたで」とか気を効かせて教えてくれるんだよね。よく考えたら本当にバレバレだったんだな。笑)、私が市内の別の地域に引っ越しをする当日に、感傷的になって、早朝に近所を散歩している時に偶然会ったこともあった。今思えば、なんて偶然!!と思うすごい出来事なのだが、その時は、会えて当たり前みたいに思った。何故W君も、早朝に歩いていたんだろう。あっ部活か!今、書きながら気付いた。アハハ!25年くらい経って急に思いついたぞ。きっと部活だったんだな。いや、でも待てよ。私はW君の家がどこにあるのかも知らなかったぞ。そんな所で会うなんて、やっぱり当時はきっと縁があったんだろうな。
 その時、「今日、引っ越しやねん。」というような簡単な会話を交わしただけ。
 実は、W君とは、高校生の時に、一度会ったことがある。
 わっ本当?!
 って、W君のことや私の当時の思いを知っていた人は、これ読んで驚いただろうか。ハハ。
 一緒にお好み焼きを食べたのだが、お互い、照れちゃって、全然会話が弾みませんでした。小学生の時は小学生の時で、可愛い思い出なんだ、大事にしまっておこうと、しみじみ感じて、向こうからの連絡も断るようにした。でも、相変わらず大きな目で、かなり個性的な彼は、まだアヒルが好きだった(笑)。可愛い、可愛いと、アヒルを見て、つい反応していたので、本当に可愛いと思ってるんだーと微笑ましかった。
 彼はどうしているだろう。やはり、思い出のままにしておきたいので、特に会いたい相手ではないけれど。
 ちなみに、彼の子供の頃の写真は、私の子供の頃の写真をさしおいて、クラスで1位に輝いたくらい可愛かった。悔しかったが、「そうか、これじゃあ敗北だ……。」と感じるくらいに、本当に可愛かった。私も可愛かったんだけどね(笑)。