小学校三年生になる時に転校して、その後の、男の子の友達たちについても、誤解がない程度に書いておきましょう(笑)。
 印象に残っている子たちは多い。
 例えば、隣りの席で、やたらにちっちゃないやがらせをしたり、嫌味を言ってきたりする子がいて、その子のことが大嫌いだったのだが、どうやらその子は私のことが好きだったらしいと人づてに聞いて、愕然としたことがある。日本の男の子って、どうして好きな子にそういうやり方で構ってもらおうとするんだろうと、ほとほといやになった出来事だった。
 他に、すごく穏やかで物静かな子なのだが、とても印象的な子がいる。いつも「自分」があって、何をする時にも、その子自身にブレがないという感じがあった。隣りの席に座っていると、妙な安心感みたいなものがあった。男の子の包容力を初めて感じた相手だったかもしれない。特に喋りもせず、好きとかそういう感情はなかったけど、ちょっとした会話に、彼の温かさを感じて、好感を持っていた。
 授業中、唐突に、先生に「なあ、先生、うんちとうんこ、どっちの言い方がええと思う?」と聞いた男の子がいた。五年生の時で、生徒を平気で威圧して、たたきまくる怖い女のその先生は、ひっくり返りそうになって大笑いしていた。「アンタはどっちが良いと思うん?」と先生が聞くと「うんちはなあ、べちゃっとしてそうでいやな感じせえへん?うんこの方が、コロコロしてまだ汚くなさそうやから、僕はうんこの方がええと思うねん。」と真顔で説明するその男の子がかわいくて皆で大笑いした。小さめでやせていて色黒、目がぱっちり大きいその男の子は、特別何ができるとか何ができないとか、目立った存在ではなかったが、友達も当たり前にいて、とにかく「素直」な反応をする子で、いやなこともいやとハッキリ言う子であった。隠れファンは結構いたんじゃないだろうか。私は特別な感情はなかったけど、中学生に入って、その子が上級生の女の子たちから大人気らしいという噂を聞いた時に「ああわかる気がするなあ」と思ったものだった。
 一番印象に残っているのは、六年生の時のW君ですかね。色白で目が大きくて、声も高く、言動が「キュート」な感じ。可愛いというと、女の子みたいだが、男の子らしく可愛い、アメリカなら「彼はキュートなの!」と言うだろうと思う感じ。一見地味な存在なのだが、色々なことをその子は笑って過ごしていた。ギャグやダジャレも好きで、よく笑わせてくれた。班の中で一人一人書いて回し、先生にチェックしてもらう日記があり、それを先生は、いつもとても無造作に、先生の机に置いていた。そもそも班で回すということは、そうやって読まれるのを覚悟で、人の目を明らかに意識しながら書くものではあった。先生の目だけでなく、親しかろうが親しくなかろうが、班の子全体の目にも触れるものであるから、クラスの子が見ても構わないといった風で、誰でも勝手に別の班のノートも読めた。Uさんと、色々な子のを読んでは、皆の面白い日常に大笑いしていた。
 特に、W君のはお腹を抱えて笑う文が多かった。その日記の中でも印象に残っているのは、お母さんがどこかへ出かける時に、服で迷いに迷う様子と、それをとても冷静に見ているW君。そして、少しずつ面倒になっていった彼は、最後にはすごくいい加減に「それ、良いんじゃない?」と言ったこと。ちょっと釈然としない感じながらも、まあそれじゃ良いかとやっと納得して出かけるお母さん、その様子が面白おかしく書かれていて、Uさんと笑った。