『ダブルドライブ』というDVDを改めて観た。井上陽水奥田民生のライブ。その中の「帰れない二人」という曲について書きたい。
 ものすごく心に染みて、泣きたくなっちゃった。
 これは、どんなに「曲を自分のものにしてしまう奥田民生」でも、井上陽水のものだと思わされた。実際は、忌野清四郎と井上陽水とで作った物らしい。何よりも、歌詞が素晴らしい。「星は帰ろうとしているのに、まだ二人は帰れないんです。」という歌詞だ。奥田民生が歌うと、素朴でフォークっぽくなるのだが、井上陽水は、そうはならない。それを見事にしっとりと歌い上げる。「聴かせる」という感じではなくて。決して「聴いてくれよ」という押し付けがましい感じもなく、井上陽水が自分に酔うことなく「ただ、切なさを歌っている」。なので、こちらも、ただただ心を動かされた。
 人は、友人であろうと恋人であろうと、好きな相手なら、別れる時に胸が痛む。でも、そのつらい気持ちをちょっと押し隠して、また会えるからと笑顔で別れる。某新聞の天声人語だったかに、上手に「別れ」について書いていた。
 これが恋人になると、また明日会えるにしても、今日これから別れなければならないことを思って、別れ際、ちょっと胸がキュッと締め付けられちゃうわけですね。あー今日もまた別れるのか。例え24時間以内にまた会えるとしてもその別れの切ないこと。別れたくないな、まだずっといたいな、という思い。
 私はこの延長線上に結婚できた幸せ者なのかもしれない。夜、毎度のお別れがいやで、早く結婚してしまいたかった。
 でもどんなに延ばし延ばしにしても、電話で喋り続けても、「バイバイ」の瞬間はやってくる。
 この気持ちを突如思い出させてくれた。
 忘れていましたよ、本当に。
 その切ない気持ちを、あのいやらしい井上陽水が(ちょっと失礼ですね、しつこくてすみません)歌い上げるのを聴いて、胸がいっぱいになった。これは彼だから、胸にしみてくるのだと思った。
 もしもこのライヴ会場内にいて、最後にこの曲をこうやって歌われたら、間違いなく私はその場で涙を流しながら聴いていただろう。
 奥田民生の音楽に対する地に足がついた感じのカッコ良さを再認識すると共に、井上陽水の底力を知ったDVDとなった。スゴイ二人なんだと思い知りました。