「父と息子の関係」について、私はまださほど勉強していない。
 母と娘、母と息子に関しては、自分が母親になったから格別に気になり、そこそこに本を読んできた。しかし、父と息子、父と娘に関しては、あまり葛藤もなく、勉強もせずにここまできてしまった。例えば、身近な存在として、私の父と、私の兄における父と息子の関係についても、あまり深く考えてこなかった。しかし、夫が夫の父親との話をしてくれたり、夫の弟の話を聞くにつけ、父親と息子も、母親と娘のように―一般的に心理学の世界で難しい関係だと言われているように―葛藤の多い関係だとわかってきた。心理学の勉強をしていると、いかに父親の存在が、家庭において大事かもわかってきたので、もっと知りたいと思っている。しかし本もまだ数冊しか読んでおらず、実際の経験、目で見たことしか書けないので、「その他」のカテゴリーに入れることにした。
 夫は、父親になると、当たり前だがそれまでとは違った面を見せるようになった。誰にでも言えることだし、妻の私もそう。結婚5年以上ずっと二人で暮らしてきた私たち。話すのが好きで、たわいもない話から、なかなか身のある話まで、気がついたら夜中の3時頃まで布団の中で、並んで天井を見ながら話していることも多々あった。色々知り尽くした感じがあったのに、子供ができると、お互い違う面が見えてきた。私は怒ることが増えたし、子供の前だとフザけることがちょっぴりエスカレートしてしまったり、絵本を読む時になりきりを楽しんだり、日常生活においても日々演じることも増えた。もちろん自分の息子と同じくらいの歳以下の子供と接することも抵抗が減ったし、厳しい面も増えた。精神的、肉体的にひ弱な面もあらわになったように思う。
 で、私から見た夫は、まず何よりもタバコをやめた。ジョギングをするのも、息子がいて余計に張り合いがあるようだ。精神面での変化は、やはり怒る場面をお目にかかることが増えたことだろうか。私より細かいことを気にすることがあるし、それに関して口うるさい。息子と怒鳴り合いの大喧嘩をするのは私だが、息子が、怒られて泣いてしまうのは夫に対してだ。私も怒鳴ったりするが、夫が怒った時は、もっと怖いんだよねぇ。だから、息子よ、怒らせないでね、とかハラハラしちゃうこともある。しかし、必ず、嫌いになって怒ってるんじゃないよ、ずっと好きなんだよ、でも「そのこと」は許せないんだ、ということを後から言ってもらうようにしている。そのせいなのかはわからないが、息子も泣き叫びながらでも、自分の意見を言うようになってきた。そして、息子はお父さんが大好きだ。私の育児する上での信念として、(思春期はどういう感情を抱いても仕方がないとして)子供には「お父さん大好き」になってほしい。
 目に余る所は、さすがに夫に「こうしてほしい」と話すが、それ以外は夫に子供との接し方をまかせている。私だって接し方に問題が多々あるだろうから。時々、私がキーっとイラついている時に、さっと横から入ってきて、息子の相手をし、その間に私の気持ちが落ち着くことがある。そんな時は、本当に心から感謝だ。
 いえ、まったく不満がないなんて、そんな綺麗ゴトじゃないんですよ(笑)。そういう話はまた別の場所でね(笑)。