時々その後も、カタカナ表記の驚きはあるのだが、またこの前、ビックリしたことがあった。「ウオーミングアップ」である。
 「クールダウン」という言葉を聞いた時に「なるほどね、体を落ち着かせるのね。」と思った。アップに対するダウンである。そして「クール」である。そこまで気付いていて、それまでさんざん使っていた「ウオーミング」に、注意を向けることはなかった。だって「ウオーミング」なんだもん。と、いつものごとく、説得力がないのだが、私にとっては「ウオーミング」は、「うおーみんぐ」という音であって、warmとはつながらなかったのだ。Coolに対してのwarm。当たり前のことなのに、長年気付かず「ウオーミングアップ」という言葉を口にし、耳にしてきた。それに気付いた時の、新鮮な驚き!また夫の呆れ顔。そしてちょっとした恥ずかしさ。いつもの流れ。もはや、度々すぎて、私も羞恥心が減ってきた。とは言え、これは他人の前では言えないことである。夫の前のみ。或いは、「お母さんは帰国子女だから、何かズレているところがある」と知っている息子の前でのみ。度々のことなので、二人も慣れつつある。にしては、気付かなかったの?という夫の驚きには、やはり、「わっ、やっぱり呆れられている」という恥ずかしさは、拭いきれない。
 でもですね、日本人が英語を話す時に、発音を気にするのなら、カタカナ表記にもう少し気を配るべきである。もう定着してしまっているので仕方ないですが。
 夫が、アメリカ英語の発音をする時に、私に確認してくることがある。そして、アメリカ英語っぽい発音にしたいなら、こうだよと伝える時、いつも気になるのは、日本人は、カタカナ表記が頭から離れないということである。だから、それに引きずられて少しでもその音を入れようとするのだ。例えば、簡単なところから言えば「her」ですね。カタカナ表記だとどうですか?「ハー」ですよね。でも、「ア」の音は入ってきません。でも、「ハー」だから、「ア」の音を入れたくなるみたいです。そういうことがとても多い。或いは「r」の音を気にするあまり、母音がおろそかになって、最初から「r」が入っちゃっている。日本人皆がそういう風に発音しがちなのが面白い。
 以前、帰国子女に関しての本にも書いたことがあるのだが、発音は別にアメリカ英語が良いとは思っていない。幼い頃アメリカに住んでいたせいで、そこそこ身についているし、細かい音の違いで、別の単語に聞こえて笑っちゃうこともあるのだが、それでも、アジア訛りの英語はなかなか悪くない、と言いたい。日本人は発音を気にし過ぎて、英語を話すことを恥ずかしがるところがある。私の場合は、あまりに単語を知らない上に、声も小さいので、軽く見られてしまう。それより、大きな声で堂々と話すことの方が、正しい発音より伝わるし、外国人にもウケが良い。中国人だって、中国訛りの英語を話すし、インド人だってインド訛りの英語を話す。日本人だって、堂々と日本訛りの英語を話せば良い!
 ただ、発音を良くしようと頑張っているけど、時々カタカナ表記にどうしても引きずられてしまうタレントなどをテレビなどで見ると、笑っちゃうのです。決してバカにした笑いではなくて、ああカタカナ表記が頭にあるんだなっていう気づき。人のそういう感じと、自分もカタカナ表記で色々引きずられている感覚。なかなか面白いのだ。